追い風を追う

が好きだ」

夕暮れの光の中。少し凹んだ白いガードレールの傍から、その向こうの街を見下ろす。それにしてもこのガードレール、一体誰が事故して歪ませたんだろう。笑っちゃうくらい滑稽な姿なんですけど。オマケに見下ろした街も規則性のない住宅街とビルとでっかいマンションとまばらに生えてる街路樹と走り回ってる鉄の塊があるくらい。あまりにも無秩序すぎて、なんだか上手く作った模型を眺めているみたいだった。何気なく手を広げて伸ばしてみたら、家が五、六軒潰れた。このまま手を横に振り回したら、この小さく見える全てを払いのけてしまえるならいいのに。とからしくない感傷。さてさて、それで俺様はどうするつもりなんだっけな?

「・・・・・・って、言ったらどうする?」

そしてはどうするつもりなのかな。ねえ、こんなところでびゅうびゅう唸る風の中で向かい合って、それからどうしようか。もともとの目的は、「友達」である(あ、俺様は親友だと思ってるんだけどね、)と「いつも」と同じように寄り道をしてたはずで(まあ日課になったのは成り行きなワケだけれども)。そしてこれから「いつも」のように帰るんじゃなかったっけ。さてさて(はは、口癖になりそう)、なんで俺様はこんな質問をしたんだろ?

風は相変わらずびゅうびゅう吹いてる。が風邪を引くかもしれないから、なんて言い訳をつけてもう帰ることにしようか。髪を掻き揚げる。風に引っ張られてる。の髪も同じくらい翻弄されてなびいてる。その間から覗いてる表情の意味が分かるのは、世界に俺様ひとりだけ。

そして、まるで青春の1ページのような夕日の逆光との声。

「残念、聞こえなかったよ」

・・・・・・よく言うよ、風は君に向かって吹いてるっていうのに。

追い風と追う

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